• 3110月

    心不全の治療に用いられているホルモン製剤に、 がん細胞の転移を抑制する働きが発見された。

    がんは心臓へ転移し難いことから、心臓に特有なANPというホルモンに着目した研究が実施された。そして、 2009年から552人の非小細胞肺がんの患者のデータを調べたのだ。

    調査結果では、心不全治療などでホルモン剤を使用しつつ がん手術した肺がん患者の2年後の再発率は4.5%であるのに対して、ホルモン剤を使わなかった人は19.2%と再発率が有意に高かったのだ。しかも、がんの進行度には関係なく再発率に大きな差がでた。

    その後、人間のがん細胞を移植したマウス実験においても、ホルモン剤によるがん抑制効果は検証された。 がん細胞を移植されたマウスの血管転移のがん細胞数は、肺腺がんで約5分の1、肺の大細胞がん・大腸がん乳がんでは約3分の1と減少したのだ。

    そして、ホルモン剤によって血管の内壁を守られ、 がん細胞が漏れ難くなっている仕組みが解明された。

    ホルモン剤が肺がんの再発を減らす効果が実証されたことから、他のがん治療に対しても転移予防薬となる可能性が高まり、さらなる研究に期待が膨らんでいる。

    ホルモン剤によるがん転移抑制効果は、国立循環器病研究センターと大阪大の共同研究チームが発見した。

  • 2910月

    鎮痛剤のアスピリンが、大腸がんの死亡率低減に効果的と判った。

    アスピリンががん治療に有効とされたのは、特定の遺伝子に変異がある大腸がん患者に対しての治療効果だ。 大腸がんと診断された964人の経過を細胞を分析と合わせて追跡調査した結果に判明した。

    大腸がん患者のうち「PIK3CA」というがん細胞の増殖に関与する遺伝子に変異があった161人と、遺伝子変異のない803人について、アスピリンを飲むかどうかで予後の違いを比較したのだ。

    PIK3CA遺伝子変異があった患者群では、アスピリンを飲む習慣がなかった95人のうち大腸がんが原因で26人が死亡した。一方、アスピリンを週に複数回飲んでいた66人では、大腸がんが死因だったのは3人だけだったのだ。この調査結果から有意にアスピリンの有効性が示されている。

    米ハーバード大の研究報告が、米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された。

  • 2610月

    炭素でできた新素材「カーボンナノチューブ」によるがんの新治療方法が開発された。「カーボンナノチューブ」は炭素原子が直径数ナノメートル(ナノは10億分の1)に六角形に結合した円筒形物質。鋼鉄より硬く、弾力性があり、電気や熱を通す性質がある。

    がんの新治療法は、カーボンナノチューブへ近赤外線を照射することで活性酸素を発生させ、活性酸素によって治療部位のがん細胞を死滅させる。

    京都大の研究グループが実験に成功した。

    カーボンナノチューブに対して、光を照射すると熱や活性酸素が発生することは既知だった。今回の新治療法では、人体への影響が少なく透過性が高い赤外線「近赤外線」を利用する。カーボンナノチューブの「半導体性」と呼ばれる性質を持った部分だけが近赤外線を吸収して活性酸素を発生するのだ。

    ヒトの肺がん細胞とカーボンナノチューブを混ぜて近赤外線を10分間照射した実験では、熱による影響も含めて45%ものがん細胞が死滅した。

    微量のカーボンナノチューブを血管から注入して、患部に近赤外線を照射する新治療法が検討されている。

  • 2310月

    マルチビタミンを毎日飲むとがんリスクが減ることが判った。

    1万5000人の男性被験者を対象とした長期の臨床試験(治験)は、ビタミンのサプリメントのがん予防効果が確認された初めての大規模治験となった。

    平均11.2年間を追跡調査されたマルチビタミンのサプリメントを服用した男性被験者群はプラセボ(偽薬)投与群と比較して、がんの発病率が8%も減少したのだ。

    ただし、このリスク減少に多大な期待は禁物で、主流のがん予防が、禁煙、抗肥満、健康的な食事、継続的な運動であることには間違いない。マルチビタミンを摂っていても喫煙を続ければ、がんリスクは高いということだ。

    国立衛生研究所(NIH)が資金提供して製薬最大手ファイザーが実施したこの大規模治験の結果は、米国がん研究会議(AACR)で発表され、米医学学会誌(JAMA)に掲載された。

  • 1810月

    肺がん新薬ザーコリが効きにくくなる仕組みを、金大附属病院がん高度先進治療センターが解明した。この肺がん新薬ザーコリはがんを小さくする高い効果があるが、治療開始から1年前後で効かなくなる問題があった 。しかし、既存の抗がん剤を併用することで効能を維持できる可能性が発見されたことで、再発を防ぐ治療法の開発に向けた一歩となりそうだ。

    研究されているのは、国内で2012年5月末に販売が始まった治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)。体内のがん細胞に関連した特定の分子だけを攻撃する「分子標的薬」の一種で、がんを増殖させる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子の働きを阻害する”肺がん特効薬”だ。この遺伝子を持つ肺がん患者には、非常に高い治療効果が現れることが分かっている。

    今回の研究では、ザーコリの効果が落ちる原因として、ザーコリによってALK融合遺伝子の働きを止めた後も、 がん増殖に関わる「上皮成長因子受容体(EGFR)」に正常細胞から分泌される特定の物質が結合することで、 がん細胞が生き延びてしまうことを解明したのだ。

    試験管内やマウス実験では、新薬ザーコリの効能が薄れても、 肺がんの分子標的治療薬「エルロチニブ」や、 大腸がん治療に使われる「セツキシマブ」を併用すると、がんが縮小することも確認された。

    日本人のがん死亡原因の1位である肺がんは、年間約7万人が亡くなる。 肺がんに悩むがん患者に、ザーコリの効能を継続させるさらなる研究が期待される。

  • 1710月

    50代後半の男性にリスクが高まってくる前立腺がん。 診断・治療法が進化したことで、死亡率は減少傾向だ。 前立腺がんは、進行が非常に遅いタイプが多いため、直接的な死因になる人はごく一部だけだ。 しかし、がん発症リスクを減らことは、男性共通の課題と言える。

    多くの癌と同様に前立腺がんのリスクも食生活に密接に関連している。 タンパク質は動物性ではなく、豆腐などの植物性が望ましく、肉よりも魚での摂取が望ましい。

    米国南カリフォルニア大学の研究報告では、 高温で焼き上げた肉の摂取は、明白に前立腺がんリスクを上昇させるとのことだ。

    この調査は、対象者が1096人。うち、早期前立腺がん患者717人、進行前立腺がん患者1140人で比較した結果、 豚肉や牛肉などの肉を週に1.5回以上フライパンで焼いて食べる男性の 進行前立腺がんのリスクは、30%も高かったのだ。 また、フライパンではなく直火焼きなど高温調理による赤身肉を週に2.5回以上食べると、 前立腺がんリスクは更に高く、40%まで上昇する。

    一方、同じグループで調べられた鶏肉のがんリスクについては、 フライパン調理では同じくリスクが上昇したが、直火焼きでは逆にリスクの低下傾向が発見された。

    このがんリスクの原因は、高温調理でタンパク質から発生する「HCAs」と、 脂身のコゲ部分や調理の煙に含まれる「PAHs」という強力な発がん物質に起因していることが判っている。

    つまり、鶏肉の発がんリスクが少なかったのは、比較的に低脂肪であるためにPAHsの発生が少なかったと推論された。 しかし、フライパンでの調理ががんリスクを上昇させる理由はまだ解明されていない。 いずれにせよ、焼き過ぎた肉は量を控えるべきであることは明白ちなった。

    日本人の前立腺がん罹患率が米国の10分の1以下と低いのは、 日本の伝統食文化が焼き物に偏らず、食品と調理方法が多様であることが大きいのだ。

  • 1610月

    転移性胃がんの抗がん剤新薬が治験で良好な結果を収めた。

    米製薬大手のイーライリリーが開発中の抗がん剤ラムシルマブが、転移性胃がんの第3相臨床試験で良好な結果を示したのだ。

    この抗癌剤新薬の治験では胃がん・胃食道接合部がん患者を対象として、第2選択薬として新薬ラムシルマブと最善の支持療法(BSC)を行った患者群をプラセボ(偽薬)とBSCの患者群と比較した。

    その結果、新薬ラムシルマブは全生存期間(OS)の改善という主要評価項目を達成し、無増悪生存期間(PFS)を延長する良好な結果を得た。これは新薬ラムシルマブの第3相試験としては、初めてのデータだった。

    世界保健機関WHOによると、 胃がんは世界で4位のがんで、新規に胃がんと診断される患者数は年間98万960人。そのうち、73万8000人が胃がんで死亡する。

  • 1510月

    身長が5センチ高くなるごとに卵巣がんリスクが7%上昇することが判った。

    英国オックスフォード大学が世界中の研究データを解析した結果、身長やBMI(肥満指数)の高い女性ほど卵巣がんリスクが高まると指摘したのだ。

    身長が5センチ高くなるごとに卵巣がんリスクが7%、BMIが5上がるごとに10%上昇したが、BMIはホルモン補充療法(更年期障害の治療法)を行うと関連が認められなくなったという。

    女性の身長やBMIが卵巣がんの発症率に関連していることは、これまでの研究結果でも示唆されていた。しかし、一貫した関連性の証明はまだ無かった。

    オックスフォード大学では、卵巣がんに関する47の研究患者データに含まれている卵巣がん患者2万5,000人超、卵巣がん患者でない女性8万人超を解析した。このデータは世界中のほぼ全て国や民族を網羅していた。

    データ解析の結果、160cm未満(平均154.8cm)を基準として、身長が5cm高くなるごとに卵巣がんリスクが7%上昇することが判明したのだ。

    例えば、身長155センチの女性と比べ、165センチの女性では卵巣がんリスクが14%高いのだ。この関連性は、閉経した女性がホルモン補充療法を行っていても同様だった。

    一方、BMIと卵巣がんの関連性も指摘された。 BMIは体重(kg)を身長(m)の二乗で割ったものだ。身長160センチ、体重55キロの人のBMIは21.5だ。

    BMIは25未満を基準として、閉経後にホルモン補充療法を受けたことのない女性ではBMIが 5増えるごとに卵巣がんリスクが10%上昇した。こちらの関連性も、ホルモン補充療法との関連性は無かった。

    身長と卵巣がんリスクが関連しているという結果は、卵巣がん発生の仕組みを解明し、治療法を開発する上で重要なのだ。

    研究成果は米医学誌「PLoS Medicine」へ発表された。

  • 1110月

    マリファナが がん細胞を殺し、増殖を妨ぐ効果のあることが証明された。しかも、抗がん剤療法のような酷い副作用が無い。

    マリファナの抗がん効果は、含まれている「カンナビディオール」や「THC」による作用だと判明している。

    マリファナに存在するカンナビディオール(CBD)という物質が、 がんの痛みや吐き気、抗がん剤療法の副作用を緩和することは既知だった。

    さらに明らかになったのは、このCBDが、がん細胞の成長を遅らせ、がん細胞の形成を妨げるため、がん抑制やがん転移防止に有効だという新しい作用だ。

    この抗がん効果については、カリフォルニア・パシフィック医療センターが2007年に手掛かりを発見していた。カンナビディオールは、癌を他の細胞に転移させる鍵となるタンパク質であるID-1遺伝子のスイッチをオフにする機能を発見されていたのだ。

    この遺伝子ID-1は、健康な細胞では限られた期間しか働かないが、乳がんや進行性がんの患者の細胞では活発に活動し、 がん転移を引き起こすことが観察された。

    この遺伝子ID-1によって活性化される がん(腫瘍)が10種類程度は存在するのだ。そして、カンナビディオールはこのがん細胞の活性化を抑止することで、前例のない強力な治療法となる可能性が明らかになったのだ。抗がん剤による化学療法では、がん細胞を止めつつも他の正常細胞も殺してしまい、病人の体だけでなく、時にはがん患者と精神や人生の質までも破壊する。しかし、化学療法と違って、カンナビディオール(CBD)なら特定のがん細胞だけを治療対象とすることができるのだ。

    「カンナビディオールは何千人もの患者に、非毒性治療の希望を与える」と、研究グループのリーダーを務めた研究者、マカリスターは述べた。しかしそれ以来、研究室で観察された効果を人体で検証するために必要な臨床試験はまだ行われていない。

    他方では、マドリードのコンプルテンセ大学が、マリファナに含まれる成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」の抗がん作用を発見している。 THCは、向精神作用を引き起こす成分でもあるが、がん細胞がテトラヒドロカンナビノール(THC)に晒されると死滅することを発見したのだ。

    1998年には、THCが脳腫瘍の中でも特に攻撃的な形態を持つがん細胞に対して、アポトーシスすなわちがん細胞の自然死を誘発することを証明した。

    これに続いて、多くの裏付けがさまざまな国で行われたが、 THCやその他のマリファナから派生する物質=カンナビノイドは、直接的な抗腫瘍効果をもっていることがわかっている。

    THCの抗がん効果に関しては、 2006年にスペインで人間への臨床試験が実施されている。標準的な脳腫瘍治療法では回復できなかった9人の脳腫瘍患者へTHCが投与した。 THCはカテーテルによってがん患部へ直接に注入された。結果として、9人全員の脳腫瘍が著しく減退したこと成果が上がり、『Nature』へ発表された。

    さらにTHCは、 肺がんに対しても同じ効果があることをハーバード大学が発見した。ハーバード大学が最も注目した抗がん効果は、 THCが肺がんのがん細胞のみを攻撃し、健康な細胞へは攻撃しなかったことだ。

    その後、白血病に対しても同様の抗がん効果があることを、ロンドンのセント・ジョージ大学が前臨床試験で実証した。

    マリファナから派生する物質=カンナビノイドは、イタリアの研究では前立腺がんに対しても非常に有効とされ、イギリスのランカスター大学では結腸がんに対しても有効に作用すると報告している。

    これらすべては、腫瘍との戦いにおいて新しい、将来有望な道筋を開く。しかし、はっきり言っておかねばならないのは、向精神作用をもつドラッグと見なされているカンナビスの「一般的な」使用による薬理的、毒物的な影響は、直接的に向精神性物質を摂取することになるだけでなく、熱分解、すなわち紙巻きの「麻薬タバコ」の燃焼の過程で生み出されるその他の物質による脅威に晒されることにもつながるということだ。

    マリファナから発生する煙には発がん物質である酸化窒素、一酸化炭素、シアン化物、ニトロソアミン、フェノール、クレゾール、が含まれているため明確に有害だ。

    しかし、マリファナから派生する物質=カンナビノイドを有効に抽出すれば、非常に効果の高く、副作用の無い、有望な抗がん剤が生成できるのだ。今後の研究に進展が注目される。

  • 0910月

    抗がん作用が話題なのはキクイモの中でも、フランス原産の仏キクイモ「アルティショー・ドゥ・ジェルザレム」だ。

    従来からキクイモは糖尿病に効用があるとされてきた。キクイモが含有している「イヌリン」という成分が腸内環境を整え、血糖値を抑制する作用があるとされているためだ。「イヌリン」はタマネギやゴボウなどにも多く含まれる成分だが、キクイモには特に高濃度に含まれているのだ。

    しかし、このキクイモの一種に、抗がん作用の高い品種が発見され、治療効果が徐々に明らかになっている。

    がんが肺内で転移した「ステージ4」いわゆる「末期肺がん」と診断された女性(82歳)が、仏キクイモを食することでがんを克服したのだ。

    末期がんとの診断後に抗がん剤治療を行ったが、腫瘍は増大。治療の術が無くなり、ビタミンCを飲むだけの在宅療法となった肺がん患者。糖尿病も患っていたこの患者が、仏キクイモを味噌汁に溶かすなどして食べた。量は、2週間程でキクイモの粉末150g。

    すると、7つあった肺の腫瘍のうち2つが消滅した。さらに、その後の治療でさらに3つの腫瘍が消滅し、最終的には、抗がん剤イレッサの投薬治療によって、最後の2つの腫瘍も消滅した。がん発見から7年後も再発無く健康だという。

    イヌリン以外の成分は研究されていなかったキクイモに関する解析研究をスタートされた。現在までに、リノール酸、オレイン酸等の複数の不飽和脂肪酸が混ざっている部分に、抗腫瘍活性が見られることが判明したのだ。抗がん効果の複数の症例が集まり、かつ腫瘍マーカーの改善例が顕著ながんは、「前立腺がん」「大腸がん」「肺がん」。

    未解明が多いものの、仏キクイモを食べることでがんを克服した人が少なからず存在する。今後は、有効成分の特定などに注目が集まるだろう。

    ●糖尿病患者のための食料だったキクイモ
    キクイモはキク科ヒマワリ属の植物。 19世紀半ばに海外から日本へ伝来。9月頃に黄色い花をつけ、10月から11月に地中に芋が実る。約3000種もの品種があるとされている。抗がん効果が話題となっているのは、表面の凹凸が比較的少ない品種である。フランス原産の青・赤紫色キクイモ(フランス名:アルティショー・ドゥ・ジェルザレム)、通称、仏キクイモである。